発送と帳簿付けで1時間ほど残業。ビールを買って帰り、とりあえず風呂に入る。なんとなく「そんな飲みたくもないのにお酒を飲もうとしているのではないか」と思ってしまい、ビールはやめてヨーグルトを食べた。田中小実昌『コミマサ・シネノート』を読み始める。装幀は平野甲賀。甲賀さんの、この頃のシャープかつほんのりとしたポップさも感じさせるデザインが好きだ。内容は当時の東京をザクザクとザッピングしていくような、速くて小気味良い文章。
24日(金)
朝8時過ぎに起きる。朝ごはん、お弁当の用意。羊雲さんからもらった豆を挽いて、コーヒーを淹れる。メルロ=ポンティ『眼と精神』読み始める。ちんぷんかんぷんかなと思っていたら、意外とわかる。それなら説明してみろ、と言われると困るけど(「わかる」と「説明できる」はまた違う)。
「哲学者というものは単に存在しようと望むだけではなく、おのれのなすことを理解しながら存在しようと望むわけですが、ただそれだけのためにも、哲学者は、その生活の事実的与件のうちにひとりでに含まれているすべての断定を一旦停止しなければなりません。しかし、さまざまな断定を停止するということはそうした断定の存することを否定することではありませんし、ましてやわれわれを物理的・社会的・文化的世界に結びつけている鎖を否認することではなく、逆にそうした結びつきを見ること、意識することです。」(p17)
洗濯をして、外出。郵便局で本の出荷。店に戻り、アルバイト用の本の準備。最近ネット出品した本や雑誌がよく売れていて助かる。そのまま開店。品出し、発送準備など進めていく。店頭買取1件。メグマイルランドさんから再納品をお願いしていた冊子が届く。そして昨年末に発注していた、YOMS開店8周年の手ぬぐいも届く。こちらは奥田亜紀子さんにイラストを頼んだ。奥田さんの単行本『ぷらせぼくらぶ』『心臓』は知り合う前から読んでいて、ある日突然SNSでフォローされて、とても驚いた。後で聞いてみると、シンプルに自分の絵が気になってフォローいただいたようで、よけい驚いた。奥田さんは自分の絵もまどの漫画も両方応援してくれている貴重な?方でもあり、まどが漫画家デビューしてからの生活や交友関係の変化を考えた時にも、奥田さんのことを思い出すことが多かった。こういう形で関われてうれしい。しかしまだ実際にお会いしたことはない。東京に行ったらご飯にでも行きたいな。
閉店後、コンビニでビールを買い、飲みながら鈴木清順『暗黒街の美女』見る。軽快というわけではないけど、全体的にテンポよく進み、見ていてとても気持ちがいい。終盤の銃撃戦のシーンもいい。しかし『美女』はヒロインの白木マリのことなのだろうか?タイトルやポスターのイメージからはかなり離れた、ワイルドで男勝り(というか、あばずれ)な役。
帰宅。まどにも手ぬぐいを見せて、喜ぶ。
25日(土)
朝8時前に起き、朝ごはんとお弁当の用意。早めに外出し、本を発送して南に行く。この日は読書ではなく、アレの作業。いろんな人に連絡する。うまいこといくだろうか。その後作業部屋に行き、アレの作業続き。
開店。ここ最近はあまり平日も週末も売り上げは変わらないかなと思っていたけど、この日はそこそこ売れてありがたかった。店頭買取1件。アルバイトMさん来て、支払いと本の受け渡し。田中菫さんより”DIET AND OIL PAINT"追加分が届き、品出しする。SNSへの紹介文も新しく考えて書いた。何度も「自分はこれのどの部分を良いと感じたのだろう」と問い直して言葉にするのは、良いことな気がする。早速手ぬぐいがウェブショップでも売れていて、発送準備が忙しかった。
閉店時間を過ぎても発送、帳簿付け。よく働いた(しかしウェブショップ分はまだ未発送の商品が残っている)。23時頃に帰宅。まどがちょうど風呂に入っていて、その後に自分も入る。上がって、『シネノート』続き。昔のエッセイや対談本なんかを読むと、今ではとても口に出せないような差別的な言葉がさらっと書かれていて驚くことが多い。しかし田中小実昌はまだ全然マイルドなほうか。24時半頃に寝る。
26日(日)
朝9時過ぎに起きる。寝すぎた。ご飯を食べてお弁当の準備をし、自転車で外出。中央郵便局まで行って本を発送し、レターパックや消耗品の買い出し。多めに買っているつもりだけど、なんだかんだですぐになくなってしまう。店に少し早めに着き、スケッチブックを1枚描く。スケッチブックへのドローイングはそれ単体で作品とすることはあまりないけど、やっていないと形や線のボキャブラリーが減っていくし、何より簡単な道具と短い時間で絵のことを考えるスイッチが入るのが良い。
開店。一昨日からたくさんの注文が入っている手ぬぐいの発送準備を進め、品出しなど。夕方にはまだ完了していなかった諸々の口座切り替え手続きを進める。こういう作業は肩が凝るけど、Amazonプライムなどで見たい映画を探すことで精神の滋養を得た。
お客さんと少しこの辺のお店のことなどお話。古本屋などいろいろ回られているようだった。この方は小豆島出身で、うちで購入された香川県の生きもの?についての本を読んでいたところ、『マミズクラゲ』という淡水で生息可能なクラゲが小豆島のとある池で発生したことが書かれており、実際にその池まで足を運んだそうだ。池の近くにお住まいの70代のおじいさんに聞いたところ、その方がとてもよくマミズクラゲのことを覚えていて、いきいきとその時の話をしてくださったとのこと。なんとそのおじいさんが小学5年生の時に1年間だけ発生したということなので、もう60年は前のことになる。お客さんは「ここであの本を買わなかったらおじいさんに話を聞くまでの体験はなかったわけです」と言ってくれた。自分が知らないだけでこういうことが起きてるのかもしれないと思うとわくわくするし、できるだけ店をきっかけにして起きた出来事はこうして記録にしておきたいと思う。世間からしてみればなんでもないことかもしれないけど、そのお客さんにとってみればかけがえのない時間で、自分にとってもそれを知ることは特別な経験だ。こういうのが良いなと最近思う。
閉店後、本を出荷して、ビールを飲みながら蔵原惟繕『ある脅迫』見る。1960年作。偶然新潟県の直江津が舞台でうれしくなった。これにも白木マリが出ている。66分という短い尺の中に「おっ」というカットもあり、展開の緩急もありで、かなり面白かった。ラストのタバコのシーンも良い。
今日はもう帰ります。
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