2024年4月11日木曜日

つくば、東京(2024年04月07~11日)

06日(土)夜

19時半に閉店、ことでんに乗り高松駅へと向かう。バスで東京へ。チェーザレ・パヴェーゼ『月とかがり火』読み終えて寝る。


07日(日)

バスの中で買っておいたおにぎりを食べ、朝8時前に東京駅に着く。総武本線に乗り佐倉へ。遠いけれど、下り方面なので空いている。さっきまで大混雑の東京駅にいたのが、あっという間に郊外感あふれるベッドタウンになり、畑や田んぼの景色が広がり出す。林哲夫『喫茶店の時代』読み始める。戦前の日本の文学者の話が多く、とても面白い。

佐倉駅に着き、無料送迎バスに乗って川村記念美術館へと向かう。日本の美術館では初のカール・アンドレ展。以前美術館より送っていただいた招待券で入場。キャプションや解説は配布されるリーフレットにまとめられており、展示室内での作品以外の要素は可能な限り排されている。自分はもう少し過去の展示記録写真などがあっても良い気がしたけど、これは単に好みの問題か。作品を間近に見てみると、鉄板の錆びや角材の割れ、ひとつひとつの素材の長さや角度の違いが気になってくる。それほど厳密ではないようだ。解説を読むと、時間の経過による素材の劣化も作品と一部としている(そういえばガラスが使われていない)ことや、日本の枯山水への共感、空間と彫刻の主従関係が逆転するような「場(プレイス)としての彫刻」への意識についても書かれていた。「作庭」という意識はあったのだろうか?完全なインストラクション作品としなかった理由や、一つの素材を自分の手で持てる範囲に抑えていた理由(作品も、プロジェクトと呼べるほどの大規模なものは無い)も気になった。

再び送迎バスで京成佐倉へ。東武線、つくばエクスプレスと乗り継いでつくばへ向かう。『喫茶店の時代』読み終える。

千年一日に着。早速拓人君とえっちゃん夫妻に会う。大阪でPal Joeyの出るイベントに行ったぶりだから、7年ぶりくらいか。アイスコーヒーを頼み、小沼丹『木菟燈籠』読み始める。ほどなくして、しわしわや蚊にちゃんが来てくれた。なんとなく2人とも10年弱ぶりに会ったような気がしたけど、しわしわは7年ぶり、蚊にちゃんは5年ぶりか。コロナ以降時間の感覚がおかしい。ESVのマドさん、なしさんも一緒。マドさんは東京にいた頃からいろんな場所でお見掛けしていたけど、初めてお話した。その後、河合さんが初日に続きまた来てくれて、福島からデザイナーの佐藤豊さんが新幹線で(!)来てくれる。佐藤さんはyomsでも扱っている河合さんの画集のデザインも手掛けていて、お互い作ったzineを送ったりというやり取りは今までもあったけど、お会いするのは初めてだった。仙台の古本屋さんでも働いているそうで、古本の話も少しできた。千年一日の隣にあるPeopleで、岩波文庫のヴァレリー詩集を購入。

夜になって18時をまわり、千年一日店内でたこ焼きパーティー。ちよりさんが道具や材料を持ってきてくれて、みんなで手伝う。最初はちよりさんとヤマーンさん、千年一日の土田君、People植田さん、自分とで5~6人になるのかなと思っていたら、近くでお花見をしている人達やお店をやっている人などが集まってきて、最終的に20人ほどになる。つくばの辺りにはいろいろな人がいて、いろんなお店があるんだなと改めて思った。たこ焼きも焼きそばもおいしかった。

この日は拓人君と、ちよりさんヤマーンさんのお家に泊まらせてもらった。拓人君ずっとしゃべっている。いいなあ。4人全員世代も近く、2時近くまで音楽を中心にいろんな話をした。


08日(月)

朝10時過ぎに起き、シャワーを浴びる。ヤマーンさんは仕事、拓人君も栃木県の自宅へ既に向かっていた。ちよりさんが玉子と梅入りのうどんを作ってくれていて、ありがたくいただく。とてもおいしい。車で再び千年一日へと向かう。ちよりさんは東京の某有名ジャズ喫茶でも週一で働いているそう。行ってみたいな。

個展最終日。今回の個展は初日と最終日が平日というのもあり、昨日から前乗りしたという流れ。『木菟燈籠』を読みながら在廊する。お昼ご飯はブッダボウル。いろんな野菜が入っていておいしい。香川から矢野君が、なんと自転車持参で来てくれる。新幹線に乗って、常磐線に乗り換え、土浦からつくばまでこいできたそうだ。矢野君の笑顔になごむ(茨城の皆さんもなごんでいた)。店の今後の展開などもいろいろ聞いた。その後成瀬さんが来てくれる。今日たまたま有給をとっていたらしい。

18時をまわり、個展終了。またPeopleへ行き、本を3冊ほど購入する。土田君と成瀬さんに手伝ってもらい撤収作業。思ったよりスムーズに進み、無事に完了。昨年から県外での個展が続き、声をかけてもらえるうれしさと、どうしてもかかってしまう諸経費の苦しさとで板挟みになっていたけれど、終わってみればいつも気持ちは満たされている。つくば駅近くの中華で晩ごはん、レバニラ定食を食べる。小説や映画の話。恋愛相談を受ける。恋愛について考えたのなんて何年ぶりだろうか?

この日の宿泊は新宿区役所前のカプセルホテル。お世辞にもきれいとは言えないが、フロントスタッフの対応が優しく、宿泊部屋は静かだった。アクセスも良い。サウナの温度は高め。とにかくいろんな国籍の人がいて面白かった。『木菟燈籠』読み終えて寝る。興奮していたのか、途中何度か目が覚めた。


09日(火)

朝8時頃に起き、チェックアウト。ベルクへ行き朝ごはん。植草甚一『映画はどんどん新しくなってゆく』読み始める。打ち合わせ1件。どうなるだろうか。

この日は東京でレコード店などをまわる。新宿駅のコインロッカーに荷物を預けて渋谷へ移動、すごい雨だ。

レコファンに行く。広々とした店内に大量のCDレコードがあり、早くも海外客がレコードを見始めている。とても全部は見切れないので、ジャンルを絞ってCDだけ見る。『キューバ歌謡創成期の歴史』というコンピレーション、渚十吾、里国隆を購入。他にも気になるものがあったけど、ちょっと高かったりした。

ムルギーに行こうとしたら、火曜日もしばらく定休日になりますと貼り紙がされていた。その場で他のカレー屋さんを調べ、初恋というお店へ。ちょうど開いたばかりのタイミングで空いていたけど、自分が座った後にどんどんお客さんが入ってきていっぱいになる。チキンとラムキーマの2種あいがけを食べた。おいしい。

雨が強く、道玄坂の路肩に水が川のように流れている。濡れながらディスクユニオンのクラブミュージック館へ。Childiscから出ている佐近田展康のアルバム、A.K.I.Productionsの12inchシングル、Rephlexから出ているSlipperというユニットのLP(高校の時一度買ったけど売ってしまった)を購入。レコードはどちらも400円くらい。これくらいの値段なら迷いなく買える。

道玄坂から少し入ったところにある、名曲喫茶ライオンへ。1926年創業。自分は古い喫茶店が好きだけど、東京にいた頃はそれらをめぐるほど熱心ではなく、入るのは今回が初めて。壁際に大きなスピーカーが設置されていて、椅子は全てスピーカーのほうを向いており、店内の抑え目の照明もあって教会のような雰囲気。一人客のおじいさんがみんな目をつぶってクラシック音楽に聞き入っている。店内の撮影はもちろん、私語も禁止。カフェオレを飲みつつ自分も音楽にひたる。ウェイターの若い男性が、レコードが終わるたびに作曲者や曲名などの解説を短く入れるのもいい。店内は読書が困難なほど暗いので、途中で小さな照明のある席に移動。素晴らしい時間を過ごすことができた。また来たい。

地下鉄に乗り、千駄木へ向かう。『映画~』読み終える。ヌーヴェル・ヴァーグ及びそれに影響されたヨーロッパの若手映画作家の動向、アメリカのアンダーグラウンド映画(ジャック・スミス、ケネス・アンガー、ジョナス・メカスなど)についての話題が中心。特に後者のほうはまったく知らない映画作家の名前が多い。いろいろ調べて見てみようか。

千駄木に着き、歩いてSCAI THE BATHHOUSEへ。10年ぶりくらいに来た。アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展を見る。ドローイングとカード形の写真作品、奥に映像インスタレーションが1点。映像は差し込む抽象的な形の光が印象的で、プレスリリースを見るとハンス・リヒターの映画などを参照しているとあった。谷中駅へと向かう途中、たくさんのみかんが落ちているお寺を発見。写真に撮る。

お茶の水へ移動し、ユニオン。アフリカや東南アジアのレコードもたくさんあって楽しいが、どれも高い。この辺でCDやレコードへの欲求が少し煮詰まってきたのか、なかなか手が出ず。その後神保町へと歩き、富士レコード社へ行くが、買えず。@ワンダーに寄り、文芸文庫版『木山捷平全詩集』購入。神保町ユニオンに入り、EMBRYOとNO NECK BLUES BANDのセッションライブCDと、レコードでフレッチャー・ヘンダーソンとグレン・ミラーの戦前の録音のものを買う。こちらもレコードは2枚とも400円くらいで、安かった。

下北沢へ移動。成瀬さんと馬場君とでBotanyへ行く。馬場君とBotanyの川口さんは、2人ともimmesurableというレーベルから音楽作品をリリースしている。会うのは初めてだったようで、機会を作れて良かった。みかんの花を漬け込んだサワーを飲み、いろんなおかずの乗っているプレートごはんを食べる。おいしい。すぐ近くのpianola recordsに寄り、bananaさんのCDRと、たぬきがテーマのDJイベント『ぽんぽこ山』のCDRを買う。ミヤジ、かえでさん、栗原さん、秋山さん、ここでもいろんな人に会えた。栗原さんからCDRいただく。時間があまりなく、1時間と少し経ったところで新宿に向かう。次はもっとゆっくり来たい。

バスに無事乗り込み、Peopleで買った『ヴァレリー詩集』読み始める。今回はいろんな人に会ったし、本もたくさん読めた。


10日(水)

朝8時過ぎに高松駅到着。とても寒い。まどと南で落ち合い、モーニング。つくばや東京での出来事や、まどのここ3日間の出来事などを話したり聞いたり。ネーム苦戦しているようだ。店に荷物を置いて、再び外出。銀行と100均に寄り、お弁当を買う。

今回の旅ではいろんな人に会えたし、気になっていたお店にも行けて、そのうれしさと同じくらい「谷中のお寺にたくさんのみかんが落ちていた」のが気になっている。先月につくばへ行った時に見た、輪っかをぐにゃぐにゃ曲げて作ったような遊具。去年大阪で個展をやった時に居酒屋で食べた、ハムが上になったハムエッグ。こないだyomsの近所の路上に落ちていた「場」の文字。なんとなく見過ごされて忘れられるけど、目にした瞬間「なんか良いなぁ」と思わせる物たち。これらを「路上観察」とか「アノニマスな造形」とか言ってしまえば話はすぐに終わってしまうけど、なぜ自分が「良い」と思ってしまったのかを粘り強く考えていくことは、「店づくり」にも「展覧会やイベントの企画」にも「絵画の構成」にも良い作用がありそうだ。

開店。この日は久しぶりの営業だったせいか、お客さんが多かった。海外からの方も来られる。ネットに出していた高めの商品もいくつか売れた。発送、少し品出しや均一本の補充。東京で買ったCDを聞きながら作業する。夜になり、先日出張買取にお伺いしたSさんがご来店。映画や小説の話をする。買取では文学関連を中心にお売りいただいたけど、今度また映画関連などもお売りいただけることになりそうだ。その後、堀金君が来てくれる。ちょうど堀金君がライブをする19日のルクスでのイベントを予約したところだった。ここでも映画の話をいろいろ。

早めに帰るつもりが、帳簿付けなどで結局22時を過ぎてしまう。帰宅、荷物を片づけて風呂。ウイスキー飲みつつ、光嶋裕介『ここちよさの建築』読み始める。1時ごろに寝た。


11日(木)

朝9時過ぎに起きる。ぐっすり眠れた。朝ごはんを食べる。個展の時お土産にもらった山本山の味付け海苔が、とてもきれいでおいしい。お弁当の用意、掃除、洗濯。

外出。店に荷物を置いて、本の発送、スマートレターの買い出し、酒屋へ飲み物の買い出し。飲み物の買い出しは疲れる。

開店。この日はブログの更新や品出しなど。Yさん来られ、高松オルネの話などをする。まだ行けてないな。お土産を買う時のお店の選択肢が増えたのはうれしい。

今日はまだこれから少し作業。

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